東京地方裁判所 昭和55年(行ウ)6号 判決
原告 有限会社 大谷
被告 葛飾税務署長
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告の請求の趣旨
1 被告が原告に対して昭和五三年三月二八日付けでした
(一) 昭和四九年四月一日から同五〇年三月三一日までの事業年度の法人税についての更正(ただし、昭和六一年五月九日付けの再更正により減額された後の部分)のうち、課税土地譲渡利益金額を五二万四〇〇〇円として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定
(二) 昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度の法人税についての更正のうち、課税土地譲渡利益金額を八二万七〇〇〇円として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定
(三) 昭和五一年四月一日から同五二年三月三一日までの事業年度の法人税についての更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、昭和六一年五月九日付けの再更正及び過少申告加算税変更決定により減額された後の部分)のうち、課税土地譲渡利益金額を八三三万八〇〇〇円として計算した額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定
を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する被告の答弁
主文同旨
第二当事者の主張
一 原告の請求の原因
1 原告は、不動産の管理等を目的とする会社であるが、昭和四九年四月一日から昭和五〇年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五〇年三月期」という。)、昭和五〇年四月一日から昭和五一年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五一年三月期」という。)及び昭和五一年四月一日から昭和五二年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五二年三月期」という。)について、別紙一の各確定申告欄記載のとおり、法人税の確定申告をした。なお、その後、原告は、昭和五二年三月期について、所得金額〇円、課税土地譲渡利益金額八三三万八〇〇〇円、法人税額三四万四五〇〇円と修正申告をした。
2 これに対して、被告は、昭和五三年三月二八日、別紙一の各更正・賦課決定欄記載のとおり、更正及び加算税賦課決定をした。
3 しかし、右各更正及び加算税賦課決定は、違法である。
4 原告は、右各処分の取消しを求めて、昭和五三年五月二七日、国税不服審判所長に対して審査請求をしたが、昭和五四年九月一〇日、右審査請求を棄却する旨の裁決がされ、同裁決書は同年一〇月一六日原告に送達された。
5 被告は、昭和六一年五月九日、別紙一の各再更正・変更決定欄記載のとおり、再更正及び加算税変更決定をした。
6 よつて、請求の趣旨記載の判決を求める。
二 請求原因に対する被告の答弁
1 請求原因1を認める。
2 同2を認める。
3 同3を争う。
4 同4を認める。
5 同5を認める。
三 被告の主張
1 被告のした本件各処分は、次のとおり、適法である。
(一) 昭和五〇年三月期
課税土地譲渡利益金額((1)+(2)) 三一七万九〇〇〇円
(1) 申告土地譲渡利益金額 五二万四〇〇〇円
(2) 加算すべき金額 二六五万五〇〇〇円
(二) 昭和五一年三月期
課税土地譲渡利益金額((1)+(2)) 三一一万七〇〇〇円
(1) 申告土地譲渡利益金額 八二万七〇〇〇円
(2) 加算すべき金額 二二九万円
(三) 昭和五二年三月期
課税土地譲渡利益金額((1)+(2)) 三二一七万一〇〇〇円
(1) 申告土地譲渡利益金額 八三三万八〇〇〇円
(2) 加算すべき金額 二三八三万三〇〇〇円
(四) 右各期における土地譲渡利益金額の加算事由
(1) 原告は、右各期において、別紙二ないし四記載のとおり、各「譲渡土地」欄記載の土地を各「取得年月日」欄記載の日に取得し、各「譲渡年月日」欄記載の日に譲渡したが、その「帳簿価額の累計額」、「収益の額」、「原価の額」、「販売費及び一般管理費の額」は、それぞれ各当該欄の「被告主張額」の項に記載のとおりである。
(2) 右各土地の譲渡に係る「経費の額」(租税特別措置法六三条二項二号)のうち、これらの土地の保有のために要した各「負債の利子の額は、租税特別措置法施行令(昭和五三年政令第七九号による改正前のもの、以下同じ。)三八条の四第六項一号において定められた方法(いわゆる概算法)によつて計算すべきであり、これによつて計算した各金額は、それぞれ別紙二ないし四の各「負債利子の額」欄の「被告主張額」の項に記載のとおりである。
(3)ア 原告は、本件各「負債の利子の額」につき、各譲渡土地の帳簿価額の累計額に「一〇〇分の一〇」(ただし、別紙二の7の鎌ケ谷所在の土地については「一〇〇分の六」)の割合を乗じて計算した金額を法人税申告書に記載した(別紙二ないし四の各「負債利子の額」欄の「確定申告額」の項に記載されているとおりである。)
イ しかし、原告の右計算方法は、前記施行令三八条の四第八項にいう「合理的に計算」したものと認められないから、本件各「負債の利子の額」は、同第六項に定められた方法によつて計算するほかないのである。これを詳説すると、次のとおりである。
租税特別措置法は、土地譲渡等がある場合に特別税率を適用すべき譲渡利益金額の算定において、土地譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額の計算のうち負債利子の額の計算につき原則として概算法により計算するものとし(同法六三条二項、同法施行令三八条の四第六項)、例外的に「経費の額……のうち当該土地の譲渡等に係る部分の金額を合理的に計算して法人税法第百五一条第一項に規定する法人税申告書に記載した場合には」いわゆる実額配賦法による計算を許容している(同法施行令三八条の四第八項)。
この場合の概算法を算式で示すと
概算値=〔{(各事業年度末の帳簿価額×各事業年度の保有期間の月数/12)の合計額}+(譲渡原価×譲渡事業年度の保有期間の月数/12)〕×一定率
であり(以下「概算法算式」という。)、この一定率は六パーセントと明定されている(同法施行令三八条の四第六項)のである。
この概算法が同法施行令において負債利子の額の原則的計算方法として採用されたのは、負債利子の額を合理的に計算することが極めて困難かつ煩瑣な作業であるためである。
即ち、負債利子の額を実額配賦法で合理的に計算するためには、土地に係る負債利子の額を各土地の取得から譲渡までの全期間にわたつて集計し、譲渡した各土地ごとに適切に配分しなければならないが、このような計算は実際には困難であり、かつ煩瑣である。
実際にこの計算を行うとすれば
支払利子のうち、当日の法人の総負債額に対応する金額×当日の当該土地の帳簿価額/当日の総資産の帳簿価額
のごとき計算を日々行い、譲渡した土地の取得の日から譲渡の日までの全期間の累積額を当該土地の譲渡等に係る負債利子の額として算定しなければならないが、日々法人の総負債額、総資産の帳簿価額を明らかにする作業は、日々刻々と流動的に変化してゆく額であるだけに極めて困難かつ煩瑣であることは明らかである。
この計算をある程度簡便に行なう方法として租税特別措置法関係通達六三(四)―一七では、
当該事業年度における支払利子の合計額×C又はD/(A+B)×1/2+Cの合計額+Dの合計額
A=当該事業年度の直前事業年度の終了の日における総資産の帳簿価額から同日における土地等の帳簿価額を控除した金額
B=当該事業年度終了の日における総資産の帳簿価額から同日における土地等の帳簿価額を控除した金額
C=当該事業年度中に譲渡した個々の土地等の譲渡原価に当該個々の土地等の当該事業年度における保有期間の月数を乗じ、これを当該事業年度の月数で除して得た金額
D=当該事業年度終了の日において有する個々の土地等の同日における帳簿価額に当該個々の土地等の当該事業年度における保有期間の月数を乗じ、これを当該事業年度の月数で除して得た金額
という計算方法、いわゆる総資産あん分法を認めているが、これは前述した日々行うべき計算を期間末に行つても良いという点で計算の簡略化を許容したものであり、前記計算の簡便化の限界がこの計算方式と思われる。
これ以外に、金員借入の動機が土地の取得にある場合にこの借入金の利子を当該土地の譲渡に係る収益に対応させるなどのような方法により前記計算を簡便化することは許されない。
なぜなら、元来企業の資金繰りは、企業全体の資金需要に対応して行なわれるものであり、「金に色なし」と称される資金の高度の代替性を考慮すれば、特定の土地を取得するという動機で借り入れた資金であつても、右資金の使途自体が制約されるわけではないので、借り入れた資金の企業経営上における経済的効果は、全社的に全資産に平均的に寄与するとみる他はないからである。
以上述べたことを総合すると、実額配賦法により合理的な計算を行なうためには前述した困難、煩瑣を嫌わず日々計算を行うか、その簡便法である総資産あん分法によつて計算を行うべきであり、それを嫌うならば原則に戻り概算法によつて計算すべきなのである。
しかるに、原告は、法人税申告において負債利子の額を同申告書中の「実績による負債利子」の欄に記入し、実額配賦法を選択したかのごとき申告はしているものの、同欄に記入した数額の全ては、概算法算式によつて負債利子の額を算定したが法定された一定率である六パーセントを任意に一〇パーセントに置き換えて算出した数額と完全に一致しており、実質的にみれば概算法を選択し、ただその一定率を法定外のものに置き換えたものと認めるべきであるから、実額配賦法の選択と認めることはできず、原則に戻り概算法を正しく用いて負債利子の額を算定し直す他はないのである。
この点につき、原告は、右法人税申告書に記載した数額が実額配賦法を前提とした合理的計算法によつたものであると主張し、原処分以来様々な計算方法を提示しているが、その多くは到底合理的計算方法と認めえないか、法人税申告書に記載した数額を算出できないものであり、他方原告が提示する計算方法が変せんを重ねていること自体、法人税申告時において何ら合理的な計算を行なつていなかつたことを示す明らかな証左である。
したがつて、原告は法人税申告に際し、負債利子の額の計算について実額配賦法を選択したとはいえないのであり、これを有効に選択したとする原告の主張は、失当である。
2 以上によれば、被告のした本件各処分は、いずれも適法である。
四 被告の主張に対する原告の認否
1 被告の主張1の(一)ないし(三)のうち申告土地譲渡利益金額を認め、その余を争う。
2 同1の(四)の(1)は認める。同(2)は争う。
3 同1の(四)の(3)のアは認め、同イは争う。
五 被告の主張に対する原告の反論
1 原告は、本件各事業年度の土地譲渡利益金額の計算上控除する経費の額のうち、土地等の保有のために要した負債利子(以下「負債利子」という。)の額を、租税特別措置法施行令三八条の四第八項の規定の適用を受ける場合におけるその計算方法(以下「実額配賦法」という。)により計算した。
すなわち、原告の土地取得の資金は、すべて借入金に依存しており、その借入金の利率は一一・五パーセントであつたので、原告は、譲渡に係る土地以外の資産の保有等に係る利子の額を除いて、負債利子の割合を一〇〇分の一〇として、本件確定申告をしたものである。
被告は、原告の右負債利子の計算方法は、実質的には概算法にすぎないので、実額配賦法としては認められないと主張するが、原告が確定申告書の「実績値による負債利子の額」欄に負債利子の額を記入したことは、被告も認めるところであり、この申告書の記載により、原告の実額配賦法選択の意思は十分に表明されている。そして、実額法、概算法の選択は、申告書に記載すれば足り、税務署長の許可等は要しないのである。
また、原告は、概算法選択の場合の法定の割合である一〇〇分の六を単に一〇〇分の一〇に置き換えたものではなく、実際に原告が負担した負債利子の割合は、譲渡土地の帳簿価額累計額の一〇〇分の一〇を超えるけれども、一〇〇分の一〇を超える部分の損金算入を放棄して、一〇〇分の一〇の範囲で損金算入したものである。すなわち、決算から申告までの二か月の期間内に詳細な実額を計算することは困難であるので、原告は、実際には負債利子率が一〇パーセント以上になることは確実であるが、一〇パーセント以上の額になつても一〇パーセントを超える部分については経費として計上することを放棄する趣旨で、借入金額に一〇パーセントを乗じた金額を負債利子として計上したものである。
被告は、実額配賦の方法により負債利子の額を算出する場合には、租税特別措置法通達六三(四)―一七で定めるいわゆる総資産あん分法によるべきであり、それ以外の方法は許されないと主張するが、総資産あん分法以外でも合理的な実績による実額であれば負債利子として計上することが許されるのは当然であるから、被告の主張は失当である。
2 本件における各譲渡土地を取得するための借入金及びこれに対する利子の支払い状況は、次のとおりである。
(一) 八潮市大曾根六一、六二、六〇ノ三の土地(以下「八潮市土地」という。)を取得するための資金源並びにその利息の支払状況は、次のとおりである。
(1)ア 原告は、訴外大谷ビニール玩具有限会社より昭和四七年一二月三日金二〇〇万円を無利息で一時的に借り入れ、同日八潮市土地の売主に金二〇〇万円を支払つた。
イ 原告は、昭和四七年一二月一五日訴外大谷ビニール玩具(有)より金八〇〇万円を無利息で一時的に借り入れ、同日八潮市土地の売主に金八〇〇万円を支払つた。
ウ 原告は、昭和四七年一二月二六日訴外千葉相互銀行本八幡支店より金七〇〇〇万円を利率年八パーセントの約で借り入れ、この中から昭和四八年一月二八日八潮市土地の売主に金二〇〇〇万円を支払つた。
エ 原告は、ウ記載の千葉相互銀行本八幡支店からの借入金七〇〇〇万円の中から、昭和四八年二月二八日八潮市土地の売主に金二六五〇万円を支払つた。
オ 原告は、ウ記載の千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金の中から、昭和四八年一月八日訴外大谷ビニール玩具(有)に対し、ア並びにイ記載の借入金合計一〇〇〇万円を返済した。
(2)ア 前記千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借り入れは、左記の約定のもとに行つたものである。
記
(ア) 利率 年八パーセント
ただし、公定歩合の変動等に応じて随時変更する。
(イ) 利息支払方法 毎月末日限り翌月分を前払する。
(ウ) 元金返済方法 毎月末日を支払期日とし、三ケ月据置後、昭和四八年四月より同年一二月までは毎月二〇〇万円、昭和四九年一月より同年一一月までは毎月三〇〇万円、同年一二月には一九〇〇万円を返済する。
イ 原告は、右の借入金に対し、別表一の支払利息欄記載のとおり利息を支払い、同表弁済元本額欄記載のとおり元金を弁済した。
ウ この支払つた利息のうち、八潮市土地購入の資金五〇〇四万一〇〇〇円に対する利息に相当する額は、同表八潮市土地購入資金分利息欄記載のとおりである。
エ この「八潮市土地購入資金分利息」の計算方法は、昭和四九年三月までは、支払利息額を借入残元本の総額と八潮市土地購入資金五〇〇四万一〇〇〇円とにその額の割合で按分した。昭和四九年四月以降は、借入残元本が五〇〇四万一〇〇〇円を下回つている。
本来ならば、四九年四月以降分の利息についても四九年三月以前と同様の按分計算を行わなければならないのであるが、原告は、四九年四月分以降について、支払つた利息の全額を八潮市土地購入資金分利息とした。なぜなら、原告は、千葉相互銀行本八幡支店に返済を余儀なくされていたので返済はしたものの、資金的余裕があつたわけではないので、八潮市土地購入資金を他へ転売するまでの間ねかせておくためには、(3)及び(4)に後述するように、他の金融機関から借り入れを行わなければならない状態であり、したがつて、八潮市土地を他へ転売するまでの間この購入資金のための借り入れの元本が減少するということはなかつたからである。
(3)ア 昭和四九年四月に千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金の残元本は八潮市土地購入資金の額五〇〇四万一〇〇〇円を下回つたが、この八潮市土地購入資金の額と千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金の残元本との差額、つまり千葉相互銀行本八幡支店から借りていられなくなつた額は、何らかの方法により補つて土地を転売するまでの期間ねかせておかなければならなかつたので、原告はこの手段として、訴外葛飾農業協同組合から昭和四九年四月一七日四三〇〇万円を借り入れた。
イ この訴外葛飾農業協同組合からの借入金は、利率一〇・五パーセントの約で行つたもので、別表二支払利息欄記載のとおり利息を支払い、同表弁済元本額欄記載のとおり元本を弁済した。
ウ この支払つた利息の中で、八潮市土地購入資金のうち千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金残元本でまかなえないもの、即ち八潮市土地購入資金五〇〇四万一〇〇〇円と千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金の残元本との差額に対する利息に相当する額は、別表二「八潮市土地購入資金分利息」欄記載のとおりである。
エ この「八潮市土地購入資金分利息」欄記載の額の計算方法は、支払つた利息の額に、八潮市土地購入資金五〇〇四万一〇〇〇円から千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金の残元本を引いた差額を乗じ、これを葛飾農業協同組合からの借入金の残元本の額で除したものである。
(4)ア 訴外葛飾農業協同組合よりの借入金は、昭和五〇年一月二一日完済する必要があつたのでこれを完済し、八潮市土地購入資金のうち千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金の残元本でまかなえない部分を土地転売までねかせておくために、原告は、昭和五〇年一月三一日訴外東武信用金庫葛飾支店より一億六〇〇〇万円を借り入れた。
イ この訴外東武信用金庫からの一億六〇〇〇万円の借り入れは、左記約定によつて行つたものである。
記
(ア) 利率 年一〇・五パーセント
ただし、公定歩合の変動等に応じて随時変更する。
(イ) 利息支払方法 毎月末日限り翌月分を支払う。
(ウ) 元本返済期限 昭和五四年一二月三一日
ウ 原告は、この訴外東武信用金庫からの借入金につき、別表三記載のとおり利息を支払つた。
エ この支払つた利息の中で、八潮市土地購入資金のうち千葉相互銀行本八幡支店よりの七〇〇〇万円の借入金の残元本でまかなえない部分に対する利息の額は、別表三の「八潮市土地購入資金分利息」欄記載のとおりである。
オ この「八潮市土地購入資金分利息」欄記載額の計算方法は、支払つた利息の額に、八潮市土地購入資金五〇〇四万一〇〇〇円から千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円の借入金の残元本額を差引いた額を乗じ、これを東武信用金庫からの借入金の元本額で除したものである。
(5)ア (2)ア記載の千葉相互銀行本八幡支店よりの七〇〇〇万円の借入金は、約定の最終返済期限昭和四九年一二月三一日を過ぎても完済できなかつたので、原告は昭和五〇年一一月二九日同銀行より一億三〇〇〇万円を借り入れ、前記の七〇〇〇万円の借入金の残元本四一〇〇万円を返済する、いわゆる書きかえ、借りかえを行つた。
イ 右一億三〇〇〇万円の借入金は左記の約定により行つたものである。
記
(ア) 利率 年九・五パーセント
ただし、公定歩合の変動等に応じて随時変更する。
(イ) 利息支払方法 毎月二五日限り翌月分を前払する。
(ウ) 元金返済方法 毎月二五日を支払期日とし、昭和五〇年一二月まで据置、昭和五一年一月より昭和五七年一〇月までは毎月一五〇万円、昭和五七年一一月には七〇〇〇万円を返済する。
ウ 右一億三〇〇〇万円の借入金について、原告は、別表四の支払利息欄記載のとおり利息を支払い、同表支払元本欄記載のとおり元本を弁済した。
エ この支払つた利息のうち、八潮市土地の購入資金五〇〇四万一〇〇〇円に対する利息に相当する額は、別表四「八潮市土地購入資金分利息」欄記載のとおりである。
この計算方法は、支払つた利息の額に借人金の残元本総額と八潮市土地購入資金五〇〇四万一〇〇〇円との比を乗じたものである。
オ なお、昭和五一年三月三一日に支払つた同年四月分の利息の中の八潮市土地購入資金分については、八潮市土地を原告が転売した日である同年四月一〇日までの額を日割計算により求めてある。
(二) 鎌ケ谷市粟野字下葉貫台七三六ノ一八の土地(以下「鎌ケ谷市土地」という。)の購入資金源並びにその利息支払状況は、次のとおりである。
(1) 原告は、昭和五〇年一月三一日亀有信用金庫青戸支店から金六〇〇万円を利率年八・二五パーセントの約で借り入れ、この中から昭和五〇年二月二四日鎌ケ谷市土地の売主に対し代金全額金三二八万円を支払つた。
(2)ア 原告は、昭和五〇年一月三一日亀有信用金庫に対し、(1)記載の借入金の同年一月三一日より同年三月三一日まで分の利息として金八万一三六九円を支払い、後に二四六五円を追加支払つたので、結局原告は一月三一日より三月三一日まで分の利息として金八万三八三四円を支払つたことになる。
イ 原告が支払つた金八万三八三四円の利息のうち、鎌ケ谷市土地の購入資金分の利息に相当する額は金二〇三六円である。この二〇三六円の計算方法は、支払つた利息の額八万三八三四円に鎌ケ谷市土地購入代金三二八万円と借入金総額六〇〇万円との比を乗じ、さらに鎌ケ谷市土地代金支払日より同土地を他へ転売した昭和五〇年二月二七日までの日数である四日分を日割計算により求めたものである(別表五参照)。
(三) 八千代市上高野字稲荷前一一三七ノ七の土地(以下「八千代市土地」という。)の購入資金源並びにその利息支払状況は、次のとおりである。
(1) 原告は、昭和四六年二月二〇日千葉相互銀行本八幡支店より金一億七〇〇〇万円を利率年七・四パーセントの約で借り入れ、この中から八千代市土地代金の内金として昭和四六年五月一八日金三〇〇万円を売主に支払つた。
(2) 原告は、千葉相互銀行本八幡支店からの右一億七〇〇〇万円の借り入れについて、別表六(1)記載のとおり元本、利息を弁済したが、この利息のうち八千代市土地を昭和五〇年八月一四日に他に転売するまでの期間の同土地購入代金の内金三〇〇万円に対する利息に相当する額は、別表六(1)の「八千代市土地購入資金分利息」欄に記載したとおりであり、この計算方法は、八潮市土地購入資金分利息や鎌ケ谷市土地購入資金分利息の計算方法と同様である。
(3) 原告は、昭和五〇年六月一六日東武信用金庫葛飾支店より金一五〇〇万円也を利息年一〇パーセントの約で借り受け、この中から同年同月一七日金六〇六万円を八千代市土地購入残代金として売主に支払つた。
(4) 原告は、(3)記載の東武信用金庫からの借入金について、別表六(2)記載のとおり利息を支払つたが、このうち、八千代市土地を転売するまでの期間の同土地購入残代金六〇六万円に対する利息に相当する額は別表六(2)「八千代市土地購入資金分利息」欄に記載したとおりである。この計算方法は八潮市土地等の場合と同様である。
(四) 流山市都市計画西平井土地区画整理街区番号八符号二三、二四及び一五の一部の土地(後に換地処分があり、町名は流山市平和台となつた。以下「平和台土地」という。)の購入資金源並びにその利息支払状況について
(1) 原告は、平和台土地を昭和四七年一一月購入することになり、同年同月一七日手付金一〇〇万円を支払つたが、この一〇〇万円は、原告が同年同月一日亀有信用金庫より利率年六・七五パーセントの約で手形貸付の方法により借り入れた金六〇〇万円の中から支払つた。
(2) 原告は、平和台土地代金の内金として昭和四七年一一月二八日金七二〇万円を支払つたが、この七二〇万円は、(1)記載の亀有信用金庫よりの六〇〇万円の借入金のうちの五〇〇万円と原告が同じく亀有信用金庫から昭和四七年一一月一八日利率年六・七五パーセントの約で手形貸付の方法により借り入れた金四〇〇万円の中から支払つた。
(3) 右に記載した亀有信用金庫からの六〇〇万円と四〇〇万円の借入金は手形による借り入れで、短期間のうちに返済しなければならないもので、土地転売までの期間ねかせておく資金の資金源とはできなかつたので、原告は、昭和四七年一一月三〇日亀有信用金庫から金五五〇〇万円を利率年八・七パーセント(ただし金融事情の変化に応じて随時変更する)返済期限昭和四九年一二月三一日の約で借り入れ、これを(1)と(2)に記載した一〇〇万円と七二〇万円の平和台土地購入資金をねかせておくための資金源とするとともに、この五五〇〇万円の中から昭和四七年一二月一二日、平和台土地の残代金一六二〇万八〇〇〇円の仲介手数料四八万円を支払つた。
(4) (3)記載五五〇〇万円は昭和四九年一二月三一日元本全額を返済したが、この返済の時点において平和台土地は未だ他へ転売していなかつたので、原告は、転売までの期間平和台土地の購入資金をねかせておくために、昭和五〇年一月三一日東武信用金庫葛飾支店より金一億六〇〇〇万円を利率年一〇・五パーセント、完済期限昭和五四年一二月三一日の約で借り入れた。なお、この一億六〇〇〇万円の借入金はその一部を八潮市大曾根の土地の購入資金をねかせておくための資金ともしている。
(5) 平和台土地は分筆して、左記のように転売している。
記
転売日
転売物件
買主
平和台土地全体の取得原価の中の転売物件の取得原価に相当する額
ア
五〇、三、二四
流山市平和台一丁目八番二二号、二三号、四一号
大昌不動産(株)
四、五六六、九九四円
イ
五〇、一〇、二七
同所一丁目八番四三、四五、四七、四九号
〃
一〇、二九三、四二八円
ウ
五〇、一〇、一六
同所一丁目八番四四号
〃
四、五一四、五〇五円
エ
五一、六、四
同所一丁目八番二一号
〃
五、四一三、〇七三円
(6) (1)(2)(3)(4)に記載した亀有信用金庫からの六〇〇万円、四〇〇万円及び五五〇〇万円の借入金並びに東武信用金庫からの一億六〇〇〇万円の借入金について原告が支払つた利息のうちの平和台土地の購入資金分の利息に相当する額を求めるに当つて、平和台土地は(5)のように分筆してバラバラに転売し、その転売した時期が複数の事業年度にわたつているので、各事業年度毎に支払利息の額を求める必要上、前項ア乃至エの転売物件毎に別表七の(1)乃至(4)に分けて各転売物件にかかる支払利息の額を求めた。
この計算方法は、支払つた利息の総額に各転売物件の取得原価と借入残元本との比を乗じ、さらに支払つた利息の期間と各物件を原告が保有していた期間とにくいちがいがある時は、日割計算をして物件を保有していた期間に相当する利息の額を求めたものである(ただし、計算の都合上取得原価に利率を乗じる方法を用いた部分もある)。
(五) 流山市西深井字九ノ割七二三ノ五、七二三ノ一五、七二三ノ四の土地(以下「西深井土地」という。)の購入資金源並びにその利息支払状況について
(1) 原告は、昭和四七年一〇月一二日西深井土地を買受け、同日内金として岡田芳太郎に対し金一〇〇万円、遠藤初太郎に対し金一〇〇万円をいずれも小切手で支払い、同年同月一四日有限会社市川ボールから二〇〇万円を無利息で一時借り受けて、前記の小切手二通二〇〇万円を落した。
(2) 原告は、(四)の(3)に記載した亀有信用金庫青戸支店よりの借入金五五〇〇万円の中から(1)記載の市川ボールからの借入金を昭和四七年一二月四日と同年同月七日の二回に分けて一〇〇万円ずつ返済した。
また、右の五五〇〇万円の借入金の中から昭和四七年一一月三〇日西深井土地の契約残代金として岡田芳太郎に対し金九〇三万三〇〇〇円、遠藤初太郎に対し金九〇七万二五〇〇円を支払い、仲介業者に対し仲介手数料として金四〇万円を支払つた。
(3) (2)に記載した亀有信用金庫からの五五〇〇万円は昭和四九年一二月三一日返済しなければならなかつたが、西深井土地はこの時点で未だ転売できなかつたので、原告は西深井土地の購入資金をねかせておくために、昭和五〇年一月三一日東武信用金庫葛飾支店から金一億六〇〇〇万円を年利一〇・五パーセントの約で借り入れた。なおこの東武信用金庫からの一億六〇〇〇万円の借入金は、前述のとおり、平和台土地並びに八潮市大曾根の土地をねかせておくための資金ともした。
(4) 原告は(2)記載五五〇〇万円の借入金並びに(3)記載の一億六〇〇〇万円の借入金について、別表八「支払利息」欄記載のとおり利息を支払つたが、この中で昭和五一年一一月三〇日に転売するまでの間の西深井土地購入資金分に相当する利息の額は、同表「西深井土地購入資金分利息」欄記載のとおりである。
この計算方法は鎌ケ谷市土地や八千代市土地の場合と同様である。
(六) 柏市増尾坊山一二〇六ノ一、一二〇六ノ三、一二〇六ノ六、一二〇七ノ二の土地(以下「柏市増尾土地」という。)の購入資金源並びにその利息支払状況について
(1) 原告は、訴外岩間謙司より柏市増尾土地を購入し、昭和四八年二月一四日内金五〇〇万円を支払つたが、この金五〇〇万円は、原告が昭和四七年一二月二六日千葉相互銀行本八幡支店より年利八パーセントの約で借り入れた金七〇〇〇万円の中から支払つた。なお、この七〇〇〇万円の借入金は八潮市大曾根土地の購入資金源ともした。
(2) 原告は、昭和四八年二月二八日、柏市増尾土地代金の内金として金一〇〇〇万円を支払つたが、この金一〇〇〇万円は、有限会社大谷ビニールから同日一時的に金一〇〇〇万円を無利息で借り受けて支払つた。この有限会社大谷ビニールからの一〇〇〇万円の借入金は、昭和四八年三月一〇日返済している。
(3) 原告は、昭和四八年三月一三日、千葉相互銀行本八幡支店より金六〇〇〇万円を年利八・二五パーセントの約で借り入れ、この中から同日柏市増尾土地の残代金三八五九万九〇〇〇円並びに仲介手数料金五三万五九九〇円を支払うとともに、この借入金を昭和四八年二月一四日に支払つた内金五〇〇万円、昭和四八年二月二八日支払つた内金一〇〇〇万円を土地転売までの期間ねかせておくための資金源とした。したがつて、前記六〇〇〇万円の借入金は、昭和四八年三月一三日の借り入れより昭和四九年一一月二九日の完済までの間、柏市増尾土地の取得原価総額金五四一三万四九九〇円を土地転売までの間ねかせておくための資金源となつた。
(4) (3)記載の千葉相互銀行本八幡支店からの六〇〇〇万円の借入金は、昭和四九年一一月二九日に完済しなければならなかつたので完済したが、分譲した柏市増尾土地のうち(5)に記載するオ、カ、クの土地は、昭和四九年一一月二九日の時点において未だ転売できていなかつたので、昭和四九年一〇月三日葛飾農業協同組合より借り入れてあつた金一五〇〇万円をこのオ、カ、クの土地の取得原価をねかせておくための資金に充てた。
この葛飾農業協同組合からの一五〇〇万円は、年利一〇・五〇パーセントの約で借り入れたもので、借主は原告の代表取締役である大谷英雅個人名義になつているが、実際の借り主は原告で、利息、元本の返済も原告の資金によつてなしたものである。
(5) 柏市増尾土地のうち合筆、分筆の後昭和四九年四月より昭和五三年三月までの間に他へ転売したものは左記のとおりである。
記
転売日
転売物件
買主
柏市増尾土地全体の取得原価の中の転売物件の取得原価に相当する額
ア
四九、九、一七
柏市増尾坊山一二〇六番一二、二六号
大昌不動産(株)
四、四五一、六九六円
イ
四九、一〇、二一
同所一二〇六番一四、一七、一八号
〃
四、五八五、六八二円
ウ
四九、九、三
同所一二〇六番一〇、二〇、六号
〃
四、九五五、四三三円
エ
四九、一一、一〇
同所一二〇六番二八、三〇号
〃
五、三九四、六九二円
オ
五〇、二、五
同所一二〇六番一三、二九、二二、二七号
〃
五、八六四、八四七円
カ
五〇、三、五
同所一二〇六番一五、二三号
〃
三、三八七、八〇二円
キ
四九、九、三
同所一二〇六番一九号
〃
二七二、六八九円
ク
五〇、一一、二
同所一二〇六番一一、二五号
〃
五、三四九、二八九円
(6) (1)(3)(4)に記載した千葉相互銀行本八幡支店からの七〇〇〇万円、同銀行からの六〇〇〇万円及び葛飾農業協同組合からの一五〇〇万円の借入金について、別表九(1)乃至(8)の「弁済元本額」欄及び「支払利息」欄記載のとおり元本及び利息を支払つたが、原告が支払つた利息のうち柏市増尾土地の購入資金分の利息に相当する額を求めるに当つて、柏市増尾土地は(5)記載のように分筆してバラバラに転売し、その転売した時期が複数の事業年度にわたつているので、各事業年度毎に支払利息の額を求める必要上、(5)ア乃至クの転売物件毎に別表九の(1)乃至(8)に分けて、各転売物件にかかる支払利息の額を求めた。
この計算方法は、支払つた利息の総額に各転売物件の取得原価と借入残元本との比を乗じ、さらに支払つた利息の期間と各物件を原告が保有していた期間とにくいちがいがある時は、日割計算をして物件を保有していた期間に相当する利息の額を求めたものである。
(七) 八潮市大字垳五四三ノ四の土地(以下「八潮市垳土地」という。)の購入資金源並びにその利息支払状況について
(1) 原告は、昭和四六年九月一九日八潮市垳土地を購入し、同日内金として金一〇〇万円を売主に支払つたが、この金一〇〇万円は、前日の昭和四六年九月一八日訴外有限会社市川ボールより一時無利息で借り受けた金一〇〇万円をもつて支払つた。
(2)ア 原告は、昭和四六年九月三〇日千葉相互銀行本八幡支店より手形借入の方法により金一七〇〇万円を利息年六・七五パーセントの約により借り入れ、この中の金一〇〇万円を(1)記載の八潮市垳土地の代金の内、金一〇〇万円をねかせておくための資金源とし、訴外(有)市川ボールから一時借り入れた金一〇〇万円を同日返済した。
イ 原告はア記載の借入金について、別表一〇記載のとおり、昭和四六年九月三〇日に同日より同年一〇月一五日までの利息金五万〇三〇一円、同年一〇月二〇日に同年同月一六日より同年同月二〇日までの利息金一万八八六三円を支払つた。
右の支払利息のうち八潮市垳土地の内金一〇〇万円分に相当する利息は別表一〇記載のとおり金三八八三円である。
ウ 千葉相互銀行本八幡支店からの前記借入金は、弁済期を過ぎたので、昭和四六年一〇月二〇日全額返済した。
(3)ア 原告は、昭和四六年一一月三〇日千葉相互銀行本八幡支店から金二二五〇万円を手形借入の方法により年利率六・七五パーセントの約で借り入れ、この中から同日八潮市垳土地の代金の内金二〇〇万円を売主に支払うとともに、同年九月一九日に支払つた内金一〇〇万円をねかせておくための資金源とした。
イ 原告は、ア記載の借入金を昭和四七年一月一七日に全額返済したが、借入日より返済までの間別表一〇弁済年月日欄記載の年月日に、同表支払利息欄記載の金額の利息を支払つた。このうち八潮市垳土地購入代金のうち既払いの金三〇〇万円分に相当する利息は、別表一〇の八潮市垳土地の取得原価分に相当する利息欄記載のとおり金二万七一八四円である。
(4)ア 原告は、昭和四七年一月三一日千葉相互銀行本八幡支店より手形借り入れの方法により金三五〇〇万円を年利率六・七五パーセントの約で借り入れ、同年二月二九日右金三五〇〇万円を一旦返して直ちに金四五〇〇万円を年利同率の約で借り入れた。なお、これらの借入金は流山市西初石二ノ二〇ノ六、二ノ二〇ノ七の土地の購入資金をねかせておくための資金源ともした。
イ 原告はア記載の借入金の中から昭和四七年一月三一日八潮市垳土地の残代金七五〇万円を売主に支払うとともに、既払いの金三〇〇万円をねかせておくための資金源とした。
ウ 原告は、ア記載の借入金について、借入日より昭和四七年三月三一日までの間別表一〇の弁済年月日欄記載の年月日に同表支払利息欄記載の金額の利息を支払つたが、このうち、八潮市垳土地購入資金一〇五〇万円分に相当する利息は、同表八潮市垳土地の取得原価分に相当する利息欄記載のとおり、金一一万八一二五円である。
(5)ア 原告は、昭和四七年四月一日亀有信用金庫青戸支店より金五〇〇〇万円を年利率九パーセントの約で借り入れ、これを昭和四七年五月三一日までの間、八潮市垳土地の購入資金一〇五〇万円をねかせておくための資金源とした。右借入金は昭和四七年五月三一日全額返済した。なおこの借入金は、流山市西初石二ノ二〇ノ六、二ノ二〇ノ七の土地の購入資金をねかせておくための資金源ともした。
イ 原告はア記載借入金について昭和四七年四月一日より同年五月三一日までの間の利息として別表一〇記載のとおり同年四月一日に金七五万二〇五四円を支払つたが、このうち八潮市垳土地購入資金一〇五〇万円分に相当する利息は、同表八潮市垳土地の取得原価分に相当する利息欄記載のとおり、金一五万七九三一円である。
(6)ア 原告は、昭和四七年六月一日亀有信用金庫青戸支店より金一億四〇〇〇万円を年利率九パーセントの約で借り入れ、これを同日以降転売までの間八潮市垳土地購入資金をねかせておくための資金源とした。なお原告は、この借入金を流山市西初石二ノ二〇ノ六、二ノ二〇ノ七の土地の購入資金をねかせておくための資金源ともした。
イ 原告は、ア記載の借入金について別表一〇の弁済年月日欄記載の年月日に同表「利息の計算基準となる残元本額」欄記載の額を基準として、同表「年利率」欄記載の利率によつて計算した、同表「支払利息」欄記載の額の利息を、亀有信用金庫からの請求により支払つた。しかし、この金額は利息計算基準とした残元本額が実際の残元本額と異つているため、定められた利率による適正な利息の額より高くなつている場合があるので、この実際に支払つた額と適正な利息の額との差額は、戻し利息として亀有信用金庫から原告に返還された。
ウ 原告がア記載の借入金について支払つた利息(戻し利息を差引いた後の適正な利息額)のうち、八潮市垳土地購入資金一〇五〇万円分に相当する利息の額は、別表一〇「八潮市垳土地取得原価分の利息」欄記載のとおりである。
この計算方法は、八潮市垳土地購入資金一〇五〇万円に年利率を乗じ、これにさらに利息期間の日数を乗じて一年の日数で割る方法によつた。
(八) 流山市西初石二ノ二〇ノ六、二ノ二〇ノ七の土地(以下「流山市西初石土地」という。)の購入資金源並びにその利息支払状況について
(1)ア 原告は、流山市西初石土地を昭和四七年二月一六日購入し、同日内金として金一五〇万円を売主酒巻豊に、金一五〇万円を売主酒巻豊外二名に各々支払つたが、この計金三〇〇万円は、昭和四七年一月三一日千葉相互銀行本八幡支店より手形借入の方法により年利率六・七五パーセントの約で借り入れてあつた金三五〇〇万円の中から支払つた。
イ 原告は、アの借入金を昭和四七年二月二九日、一旦全額返済し、同日同銀行より金四五〇〇万円を同一条件で借り入れる、いわゆる借替えを行い、右金四五〇〇万円も流山市西初石土地の内金三〇〇万円をねかせておくための資金源とした。
ウ 原告は、ア、イ記載の借入金について、別表一一の弁済年月日欄記載の年月日に、同表支払利息欄記載の利息を支払つたが、このうち流山市西初石土地代金の内金三〇〇万円分に相当する利息は、同表「流山市西初石土地取得原価分に相当する利息」欄記載のとおり金二万四八九七円である。
(2)ア 原告は、昭和四七年三月三一日流山市西初石土地の代金の内金として売主酒巻豊に金一二九〇万円、同酒巻豊外二名に金三〇〇万円を各々小切手にて支払つた。
原告は、昭和四七年四月二〇日、流山市西初石の土地の残代金九九〇万円を売主酒巻豊外二名に支払い、仲介手数料の内金四〇万円を仲介業者に支払つた。又同年五月五日仲介手数料の残金四〇万円を仲介業者に支払つた。
イ 原告は、昭和四七年四月一日亀有信用金庫青戸支店より金五〇〇〇万円を年利率九パーセントの約で借り入れ、これを流山市西初石土地購入資金をねかせておくための資金源とした。右借入金は昭和四七年五月三一日全額返済した。
ウ 原告は、イ記載の借入金について、昭和四七年四月一日より同年五月三一日までの間の利息として、別表一一記載のとおり同年四月一日に金七五万二〇五四円を支払つたが、このうち流山市西初石土地購入資金分の利息に相当する額は、同表「流山市西初石土地取得原価分に相当する利息」欄記載のとおりである。
(3)ア 原告は、昭和四七年六月一日亀有信用金庫青戸支店より金一億四〇〇〇万円を年利率九パーセントの約で借り入れ、これを同日以降転売までの間流山市西初石土地の購入資金二九六〇万円をねかせておくための資金源とした。
イ 原告のア記載の借入金についての利息支払の状況は、(七)の(6)イ記載のとおりである。
ウ 原告がア記載の借入金について支払つた利息(戻し利息を差引いた後の適正な利息額)のうち、流山市西初石土地購入資金二九六〇万円分に相当する利息の額は、別表一一「流山市初石土地取得原価分に相当する利息」欄記載のとおりである。この計算方法は、八潮市垳土地の場合と同様である。
3 なお、原告は、土地を購入するための借り入れをするについては、担保として拘束性の預金をしていた。すなわち、原告は、多額の累積赤字をかかえていて、高額の定期預金、積立預金をする余裕はなかつたが、金融機関の要求により、借り入れの担保として、これらの預金をしていたものである。
したがつて、負債利子の計算をするにあたつては、この拘束性預金を考慮した実質金利を計算すべきものであり、具体的には、実際に借入金の利息として金融機関に支払つた額から実質的に拘束預金であつた定期預金及び積立預金の利子として受取つた額を差し引いた実質的支払利息額を、その利息に対応する時期の借入金残高から定期預金と積立預金の残高を差し引いた実質借入額で除した実質金利を計算すべきものである。
そして、この実質金利によれば、原告の負担した実質的な利子は平均一一パーセントを超えており、高いときには一九パーセント以上になつているから、原告が一〇パーセントの負債利子を計上したのは不当でないというべきである。
第三証拠〈省略〉
理由
一 請求原因事実は、第3項記載の事実(本件各処分が違法であること)を除いて、すべて当事者間に争いがない。
二 そこで、本件各処分の適法性について判断する。
1 被告の主張第1項記載の事実のうち、(一)ないし(三)の各(1)の申告土地譲渡利益金額が被告主張のとおりであること並びに(四)の(1)及び(3)のアの各事実は、当事者間に争いがない。
2 本件各事業年度の土地譲渡利益金額の計算上控除することのできる経費の額のうち、土地等の保有のために要した負債利子の額について、被告は、これを租税特別措置法施行令三八条の四第六項一号において定められたいわゆる概算法によつて計算すべきであると主張し、原告は、同条の四第八項の適用を受ける場合におけるその計算方法であるいわゆる実額配賦法によつて計算すべきであると主張するので、この点について判断する。
土地譲渡利益金額の計算上控除することのできる負債利子の額について、租税特別措置法施行令三八条の四第六項は、いわゆる概算法によつて計算することを原則とするものと定め、同条の四第八項は、「法人が……経費の額……のうち当該土地の譲渡等に係る部分の金額を合理的に計算して……法人税申告書に記載した場合」には、例外として、実額によつて計算することができる旨を定めている。そして、ここにいう概算法とは、(イ)当該譲渡等に係る土地の各事業年度末の帳簿価額に当該各事業年度の保有期間の月数を乗じてこれを一二で除して計算した金額の合計額と(ロ)当該譲渡等に係る土地の譲渡原価に譲渡事業年度の保有期間の月数を乗じてこれを一二で除して計算した金額との合計額に百分の六の割合を乗じて計算する方法をいうものと規定されている(同条の四第六項)。
ところで、租税特別措置法施行令が、このように負債利子の額の計算について、いわゆる概算法による計算を原則とし、実額による計算を例外としたのは、負債利子の額を実額によつて計算することは極めて困難で煩瑣なものであることによると解される。すなわち、負債利子は、当該譲渡に係る土地の保有のために要した負債の利子であるから、これを実額によつて計算するためには、当該法人が支払つた利子のうち特定の日における当該法人の総負債額に対応する金額をまず計算し、これを当日の当該譲渡に係る土地の帳簿価額と当日の当該法人の総資産の帳簿価額との比率を乗じることによつて、当該土地に係る当日の負債利子の額を計算し、このような計算を、当該譲渡に係る土地の取得の日から譲渡の日までの全保有期間について日々行い、その累積額を算出しなければならないものである。けだし、法人にあつては、自己資金と借入れ資金とは渾然一体となつて当該法人の事業経営全体に効用をもたらすものであつて、法人の資金繰りは、法人全体の資金需要に対応して行われ、たとえ特定の土地の取得の目的で借り入れた資金であつても、その借り入れた資金の経済的効果は、資金の高度の代替性により当該法人の全資産に均等に寄与するものとみなければならないからである。そして、法人の総負債額及び総資産の帳簿価額は日々変化していくものであるから、右のような計算が極めて困難で煩瑣なものであることは明らかである。そこで、施行令は、前記のとおり、前記(イ)、(ロ)の合計額(これは、とりもなおさず、当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額である。)に一定割合である六パーセントを乗じる算式をもつて概算法の算式として、これを実額による計算方法に先立つて原則的な算定方式とし、困難で煩瑣な実額による計算方式を例外的な算定方式としたものと解されるのである。
以上のような租税特別措置法施行令の規定の内容に照らすときは、同令三八条の四第八項にいう合理的な計算方法とは、前記の困難で煩瑣な実額による計算方法ないしこれに準ずる計算方法を指称するものであつて、前記の概算法ないしこれに準ずる計算方法はこれを含まないものと解するのが相当である。
このような見地に立つて本件をみると、原告は、その法人税の確定申告において、負債利子の額を確定申告書の「実績による負債利子」の欄に記入したが、その記入した金額は、当該譲渡に係る土地(ただし、別紙二の7の鎌ケ谷市所在の土地を除く。同土地については、帳簿価額の累計額に六パーセントを乗じている。)の保有期間の帳簿価額の累計額に一〇パーセントを乗じた金額であつたことは、前記のとおり、当事者間に争いがない。そして、租税特別措置法施行令三八条の四第六項の定めるいわゆる概算法は、当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額に六パーセントを乗じて算定する方式であることは、前記のとおりであるから、原告がその確定申告書に記載したものは、右の概算法と同一の算定方式を採用し単に法定割合の六パーセントを一〇パーセントに置き換えたものにすぎないというべく、これをもつて、同条の四第八項にいう負債利子の実額を合理的に計算したものということができないことは明らかである。そうすると、原告は、同条の四第八項にいう負債利子の実額を合理的に計算してこれを申告書に記載したものということができないから、その計算した金額をもつて同項にいう土地譲渡利益金額の計算上控除することの許される負債利子の額とすることはできないものといわなければならない。
この点について、原告は、負債利子の実額は、当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額の一〇パーセントを超えるものであるが、この一〇パーセントとを超える部分については経費として計上する権利を放棄して、一〇パーセントに当たる金額のみを申告書に記載したものであるから、合理的に計算された金額に当たると主張する。
しかしながら、原告の主張するところは、要するに、当該譲渡に係る土地と特定の借入金との間の結び付きを前提として、その特定の借入金のために支払つた利子の額を計算し、その額が当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額の一〇パーセントを超えるものであるというのであるから、その前提において既に失当であるといわなければならない。すなわち、原告は、譲渡に係る土地ごとにその取得資金に充てた借入金を具体的に特定して、その借入金のために支払つた利子の額を計算し、その額が当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額の一〇パーセントを超えるものであると主張しているが、前記のとおり、法人にあつては、たとえ特定の土地の取得の目的で借り入れた資金であつても、その借り入れた資金の経済的効果は、資金の高度の代替性により当該法人の全資産に均等に寄与するとみなければならないものであるから、当該譲渡に係る土地と特定の借入金との間の結び付きを認めることはできず、譲渡に係る土地ごとにその取得資金に充てた借入金を特定してこれに支払つた利子の額を計算することは許されないものといわなければならない。そうすると、原告主張の特定の借入金のために支払つた利子が当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額の一〇パーセントを超えるものであるかどうかを判断するまでもなく、原告の主張は、その前提において失当であるというべきである。のみならず、仮に、原告の主張するように、当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額に一律に一〇パーセントを乗じた金額をもつて実額による負債利子とすることが許されるとすれば、施行令が、困難で煩瑣な実額による計算方法を例外的な算定方式とし、当該譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額に一定割合を乗じる計算方法である概算法を原則的な算定方式としたうえ、その一定割合を六パーセントとした趣旨が没却されることは明らかである。したがつて、原告の主張するような計算方法をもつて施行令三八条の四第八項にいう合理的な計算方法に当たるとすることはできないものといわなければならない。
以上によれば、原告は、租税特別措置法施行令三八条の四第八項にいう負債利子の実額を合理的に計算して申告書に記載したものということができず、また、その負債利子の計算が、実質において、合理的であつたものということができないから、その計算した金額をもつて土地譲渡利益金額の計算上控除することのできる負債利子の額とすることはできないものといわなければならない。
3 そうすると、本件各譲渡土地の譲渡利益金額の計算上控除することのできる負債利子の領は、いわゆる概算法によつて計算した金額、すなわち、各譲渡に係る土地の保有期間の帳簿価額の累計額に六パーセントを乗じた金額であるというべきであるから、これを計算すると、それぞれ、別紙二ないし四の各「負債利子の額」欄の「被告主張額」の項に記載された金額になることは、計数上明らかである。そして、本件各譲渡土地に関する「収益の額」、「原価の額」、「販売費及び一般管理費の額」が別紙二ないし四の各該当欄記載のとおりであることは、当事者間に争いのないところであるから、本件各期における課税土地譲渡利益金額は、結局、別紙二ないし四の「合計」欄の「被告主張額」の項に記載された金額、すなわち、昭和五〇年三月期は三一七万九〇〇〇円、昭和五一年三月期は三一一万七〇〇〇円、昭和五二年三月期は三二一七万一〇〇〇円となることは、計数上明らかであり、本件各期の課税土地譲渡利益金額が右各金額であることを前提としてされた被告の本件各処分になんらの違法はないものといわなければならない。
三 よつて、原告の本訴請求は理由がないので、これを棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 宍戸達徳 小磯武男 金子順一)
別表一~一一〈省略〉
別紙一
(昭和四九年四月一日から同五〇年三月三一日までの事業年度) (金額単位 円)
項目
年月日
所得金額
土地譲渡
利益金額
法人税額
(所得税控除後)
過少申告
加算税額
確定申告
50・5・31
△五七、〇三九、八七五
五二四、〇〇〇
△一、一二六、五二九
更正
賦課決定
53・3・28
△五七、〇三九、八七五
三、一八〇、〇〇〇
△五九五、三二九
二六、五〇〇
審査請求
53・5・27
△五七、〇三九、八七五
五二四、〇〇〇
△一、一二六、五二九
〇
審査裁決
54・9・10
棄 却
再更正
変更決定
61・5・9
△五七、〇三九、八七五
三、一七九、〇〇〇
△五九五、五二九
二六、五〇〇
(昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度) (金額単位 円)
項目
年月日
所得金額
土地譲渡
利益金額
法人税額
(所得税控除後)
過少申告
加算税額
確定申告
51・5・31
△五〇、七〇九、六三八
八二七、〇〇〇
△二九七、五四〇
更正
賦課決定
53・3・28
△五〇、九一四、〇八八
三、一一七、〇〇〇
一六〇、四〇〇
二二、八〇〇
審査請求
53・5・27
△五〇、七〇九、六三八
八二七、〇〇〇
△二九七、五四〇
〇
審査裁決
54・9・10
棄 却
(昭和五一年四月一日から同五二年三月三一日までの事業年度) (金額単位 円)
項目
年月日
所得金額
土地譲渡
利益金額
法人税額
(所得税控除後)
過少申告
加算税額
確定申告
52・5・31
〇
八、三三八、〇〇〇
三四四、五〇〇
更正
賦課決定
53・3・28
〇
三二、四八一、〇〇〇
五、一七三、一〇〇
二四一、四〇〇
審査請求
53・5・27
〇
八、三三八、〇〇〇
三四四、五〇〇
〇
審査裁決
54・9・10
棄 却
再更正
変更決定
61・5・9
〇
三二、一七一、〇〇〇
五、一一一、一〇〇
二三八、〇〇〇
別紙二〈省略〉
別紙三〈省略〉
別紙四〈省略〉